2022/12/07

vol.2_ 箸のこと

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TEXT / SUU
PHOTO / MADOKA

料理が一割、美味しくなる箸

長年使っている箸がある。
結婚する前に妻からプレゼントされたもので、かれこれ7年ほど使っている。
『わじま 手ばしや』さんの、縞黒檀八角喰先尖角というお箸だ。

父子二代で、ひとつひとつお箸を手で削り、ひとつひとつ手で漆を塗ります。日本を代表する漆器の産地、輪島でもお箸を専門にする店は10軒ほどです。その中でも生地から塗り、加飾まで一貫してやっているのは手ばしやだけです。

わじま 手ばしや Webサイトより

Webサイトに書かれているように、この箸は全て手作り。
何よりも特筆すべきは、箸の先端の細さだ。料理を口に運ぶときの口当たりがとても良い。機械で削る大量生産のお箸は、こうは出来ないらしい。

この箸を使い出してから気づいたことがある。同じ料理を食べても箸の太さや滑らかさでなんとなく味が違ってくる気がする。これは同じビールを飲んでも、ジョッキで飲む味と小ぶりなグラスで飲むでは味が違ってくる気がするのと同じ理屈だろうか。

鍋を囲むときは少し無骨な箸の方が美味く思う。ラーメン屋で焼豚をつまむのは割り箸があっている。刺身を食べるときはやはりこの箸が良い。この箸で食べると一割ほど美味しくなる。

以前、この箸で刺身やら蒲鉾なんかをつまみながらいい気分で呑んでいると、箸の先端をかじってしまった。
この箸の要である尖った先端が5mmほど折れてしまう始末。
困ったなぁ と『わじま 手ばしや』さんの番号を調べて、とても気に入っているのでどうにか出来ないかと事情を話した。状態を見てから、とのお話だったので送ることに。

それからしばらくすると私の箸は先を削りなおして、きれいに塗り直したピカピカになって帰ってきた。修理代の請求書と共に。

すっかり感激してしまった私は、箸への愛着がさらに深まった。
先端が5mmほど短くなったこの箸で食べると料理が二割ほど美味しくなる(気がする)。

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TEXT:SUU
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