2024/04/18

Cinema Review
ドリス・ヴァン・ノッテン ~ ファブリックと花を愛する男 〜

TEXT & ILLUST / MADOKA

ベルギーを代表するファッションデザイナー、ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)。
自身の名前を冠したブランドを1986年に設立。以降、モード界を約40年に渡り牽引。その類稀な色使いやテキスタイルで多くの人を魅了し続けています。
自己資金だけで活動するという、現在では稀有な存在であり、抜きん出たデザインセンスが故に「孤高のデザイナー」と評されてたりします。

そんな彼が、2025年春夏メンズコレクションを最後にデザイナー職を退任すると発表されました。
モード界では衝撃が走ったようです。私はモード界隈とは縁がありませんがファンだったので、ちょっとショックなニュースでした。

そしてこの映画を久しぶりに鑑賞。
「ドリス・ヴァン・ノッテン ~ ファブリックと花を愛する男」

取材嫌いで有名だという彼の日常が垣間見える貴重なドキュメンタリー映画。
彼のファンのみならず、ファッションやインテリア、お花 … とにかく綺麗なものが好きな人は楽しめる作品です。

冒頭のショーのシーンから、美しい。プライベートの邸宅があまりにも素晴らしく、美しい。
広大な庭で育てた木々、お花や野菜を収穫して、部屋に飾ってゆく…そのシーンだけでも、ずーっと観ていられるくらい素敵。そして犬がかわいい…パートナーとの関係も憧れる…。
物語としては、あまり深掘りされた内容ではありません。が、とってもとっても目の保養になる映画なのです。

「日々の料理やディスプレイ、プライベートでも手を抜かない」と言ってました。常に「美」を求めているのです。み、耳が痛い…で。
でもその通りですよね。私が語るのもおこがましいですが、「美」というのは日常から溢れてくるものだとは思います。

ドリスの外見は神経質そうな雰囲気がプンプンしますが、口調は穏やか。ショーの最中のドタバタでピリピリした現場でも、声を荒げたりはしない人柄で、失礼ながらちょっと意外でした。
そして「人は嫌いな物事から、よく着想を得る。とても醜い物事や、完全に間違っている行為”見たくないもの”だ」と言うドリスですが…そうなのか…私は苦手なものから目を背けてしまいがちなので、考えさせられます。皆さんは、どうでしょう。

それにしても年に2回もコレクションを発表しなくちゃいけないなんて。それも妥協のない、生のショーという場で。考えただけで胃が痛くなります。
ちなみにご本人は「流行で終わってしまう仕事はしたくない」と、ファッションという単語はあまり好きじゃ無いのだとか。
「わたしはじっくり味わえる服を作りたい、数ヶ月後に違うテイストで着られる服、持ち主と一緒に成長できる服だ」というドリスの言葉。心に響きます。

目の保養として、そしてドリスの哲学にも触れることができる映画。お勧めです。

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TEXT:MADOKA
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