カンキツルンバ
2022/12/18

カンキツルンバ
第2話_ 青いレモンと音楽

連載 カンキツルンバ
TEXT & PHOTO / MITSU SASAHARA

11月です。
あれだけ暑かった島も朝晩はすっかり寒く、そろそろ冬支度。ストーブないと身体ガチガチ。
今回も、例によって長距離ドライバーとなり、東京⇄生口島1500キロ走って来ました。
生口橋を渡る瞬間、帰って来たぁ… と、毎回思うのも不思議な感覚。この島に、縁もゆかりも無かったのになぁ。

過去のお話はこちら→カンキツルンバ

さて、11月は早生みかんと青いレモンの収穫期なので、到着したら、まず畑パトロール。
常緑樹である柑橘の葉は、青々してるし、レモンは先月よりプックリ成長してくれてるし。12月収穫予定の石地みかんも着々と育っててくれてて、ほっ。
だけど、草ぼーぼー。通い農家しか味わえない草ボーボーさ加減。毎日管理してたら、こんな事はないからね。

でも、青いレモンがたわわに実ってる畑を見るだけで女性ホルモン上昇。
ハサミでパチっと切ると、青くて甘酸っぱい香りがふんわり流れてきます。目を瞑り大きく息を吸うと、更にホルモン値アップ。
この瞬間が、いつもたまらなくて。頭の中や、体の内側が素直になります。最高なアロマを感じながら、パチパチ、プチプチと、収穫に励む訳です。

ところで青いレモンって、マーケットや八百屋さんで見るけど、手に取る方はまだ少ないんじゃ無いかな。
これが、黄色いレモンとは格段に香りが違うのが特徴。角ハイに青いレモンのピールをシャッって削るとサンボア超えの味わいになっちゃうので、かなりオススメ。
料理にも皮ごとふんだんに使えて、青いレモンって実は、結構万能選手なんです。

左:瑞々しい青レモン
右:お水にレモンで毎日のレモン水
左:ピールを刻んで納豆とも結構合うのよ。でも、これは入れ過ぎ。
右:刻んだ青レモンのポテトサラダ
左:お肉との相性もバッチリ
右:お酢の代わりにレモンで〆る鯛

黄色いレモンになる前の、青と黄色のグラデーションのレモンも、まだまだ青いレモンの香りがたっぷり。昼も夜もレモンに囲まれるって、贅沢だわ、ホント。

今回はレモンとみかん合わせて400キロ弱の収穫で一旦打ち止め。去年の11月は、みかんだけで1トン以上あったから、今年は実りが少ないんです。実りが無いってことは、経済的にはシビれるって事なのですけどね。

青いレモンの収穫

さて、柑橘屋は10月から毎日の様に、収穫・箱詰め・出荷・収穫・箱詰め・出荷… の呪文の様なルーティンの中、島では「しまなみ海道秋の音楽休暇村」「仲野麻紀ジャパンツアー2022」と言う2つの音楽イベントがありました。

「しまなみ海道秋の音楽休暇村」は、全5ステージ。沢山のアーティストが参加した最終日は、ベルカントホールという646席ある室内楽ホールで行われ、映画×音楽の集大成を、ボーカル Noriko Suzuki の歌声で締めくくり。
(畑作業があったから今回は生では聞けなかったけど)何度も生で聴いてる彼女の歌声は、まさに女王。痺れます。

ベルカントホール

もう一つのイベント「仲野麻紀ジャパンツアー2022」は、イベントに不慣れな私が、ライブのアレンジをさせてもらいました。

昨年オープンした宿泊施設『Soil Setoda Living』の1階レストラン『MINATOYA 』は、島1番のおしゃれカフェで、瀬戸内海を目の前に位置するリビングルーム。
上で泊まって、下で食べる方式のカジュアルオーベルジュみたいなイメージ。
目の前がすぐ瀬戸内海という、このレストランをステージに、ディナーの後にサックスの奏でを楽しむ1dayイベント。

Soil Setoda(ソイル瀬戸田)

ディナー担当は、『MINATOYA』の鬼崎翔大シェフ。彼がまた面白い人で多動力人。
西麻布のモダンチャイニーズのベッドシェフ出身で、パリのマレ地区にあるレストラン『SOMA』の立ち上げにも携わった人なんだけど、薪を使って中華を仕上げるヌーベルキュイジーヌ。
今回はその鬼崎シェフ、パリからは仲野麻紀(サックス)、柑橘屋トニーファームのコラボイベントだったのです。

今年の8月、真夏の畑仕事の合間、あまりの暑さに避難して、友達親子と海でぷかぷか浮いて体を冷やしていたら、コルシカ島から突然の連絡。
「島で演奏できるかな?」パリ在住のサックス奏者仲野麻紀からでした。

音楽イベントのアレンジなどした事なかったけど、彼女の音を島で聞きたくて、「探してみるね」と答えた所から始まったストーリー。
生口島『Soil Setoda Living』のスタッフ、『MINATOYA』鬼崎シェフ、パリの仲野麻紀、東京の私で遠隔ミーティングを幾度もしながら実現した今回のジャパンツアーは瀬戸内の静かな凪と相まって大人な夜の始まりとなりました。

ライブ前の薄暮

19時30分、白いドレスに裸足で登場した仲野麻紀は、ウェットなサックスの音を奏で、その瞬間、パリにいるのか、中東にいるのか、はたまた宇宙にいるのか。。。ノマドな空気感。
コースのデザートも終わりかけ、残ったワインを片手に感じるサックスの音は、激しくトキメキます。

ソイル瀬戸田でのライブ風景。
仲野麻紀 × Noriko Suzuki

自身のソロアルバムからも数曲、堪えきれない感情にも似た、強さと切なさの残る音に、吸い込まれた1時間。
ライブの終盤、音楽祭で滞在中の Noriko Suzuki が飛び入り参加し、トロけるセッションとなりました。

海とワインとサックスの奏は、なぜにこう魅せられるのだろう。

関連情報

Farm

  • Honey Farm(ハニーファーム)
    https://www.instagram.com/honeyfarm0111/
  • Tony Farm(トニーファーム)
    https://tonyfarm209.stores.jp
  • 広島県尾道市瀬戸田町。瀬戸内海に浮かぶ生口島にあるこの町は、日本随一のレモンの産地として知られています。「Honey Farm」と「Tony Farm」は、その瀬戸田にある小さな柑橘農園です。高齢化のために放棄されていた柑橘畑を借りて再生し、農薬、除草剤、肥料を使わない自然農法でレモンやはっさくを育てています。
MITSU SASAHARA
笹原 光 / Stylist , Farmer
レディース、メンズファッション誌から広告まで幅広くStylistとして活躍。併せて「健康な心と体は食と自然から」との考えから、瀬戸内海に浮かぶ生口島で、カメラマン谷内氏が営む「Tony Farm」の運営サポートをする傍ら、自らのレモン畑「Honey Farm」を立ち上げる。農薬、除草剤、肥料を使わない自然農法でレモンやはっさくを育てている。
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