vol.8_ Mitterteich(ミッタータイヒ)の平皿
連載 もののこと ことのこと
PHOTO / MADOKA
ドイツからやってきた、ブルーオニオン柄の平皿
我が家に新たに洋食器がやってきた。
この洋皿は、近所にある区が運営するリサイクルショップをぶらぶらしている時に見つけた。
ブルーの染料で、お花やらなんやら植物がお皿全体に描かれていてなんとも可愛らしく手に取った。使いやすそうなサイズで、ケーキなんかをのせたらいい感じにレトロな雰囲気になりそうだ。
お値段、1枚800円。他のお皿が100円〜300円程度で売られている店内では格段に高い(笑)。それでも1枚800円は普通に考えたらとても安い … 。高い?安い?なんかわからなくなってしまう … 。
まぁ、気に入ったから安い。という流れで我が家の食器棚に並んだ。
MITTERTEICH(ミッタータイヒ)
どこのお皿だろう?と、裏をみると「MITTERTEICH」とある。「BAVARIA」「GERMANY」とも。
どうやらドイツからやってきたようだ。そしてブランド名と思われる「MITTERTEICH」… 。
なんと読むかもわからない。もちろん聞いたこともない。
調べてみると、「ミッタータイヒ」と読むらしい。「BABARIA(ババリア)」は州の名前。ドイツのババリア州にあるミッタータイヒという町にある陶磁器のメーカーということのようだ。
ちなみに「Bavaria(ババリア)」は英語表記。日本では「Bayern(バイエルン)」と呼称されており、とある商品名で耳覚えのある地名。
さらに検索してみると、
ミッタータイヒはババリアの北東部チェコ国境の町ミッタータイヒに創業し、創業当初は家庭用の食器を製造していました。
いわの美術株式会社 より
品質が高く、鉛やカドニウムなど有害物質を含まない事で世界中のホテルやレストランに注目され、1930年代の終わり頃から国外への輸出が盛んに行われるようになります。
最先端技術を駆使してオーブン用の耐熱食器や贈答品の製造を行い、ドイツを代表する陶磁器メーカーへと成長し、マイセン写しやミッドセンチュリーなど色々なデザインを制作していきます。
そんな中、大規模な火災によって工場を失うという出来事が起こってしまいます。
何とか持ちこたえましたが、時代は大量生産へと移り、品質にこだわっていたミッタータイヒは経営困難となり、2006年に閉鎖となってしまいました。
とある。年表もあって、創業は1867年。日本では明治維新があった年に始まった会社。その後、工場火災を経て2006年に閉鎖とある。実に139年も続いていた老舗陶磁器のメーカーらしい。
近所のリサイクルショップで何気なく売っていたお皿に、こんな歴史が刻まれているとは … 。
ブルーオニオンの柄
そしてこの可愛らしい柄について。
これもWebで調べると (便利な時代です)、ブルーオニオンと呼ばれる柄らしい。青い玉ねぎです。
マイセンの絵付け師J.D.クレッチマーが、1739年にデザインしたパターン。
ブランド食器買取のセレクターズより
中国のザクロ文様に倣ってデザインされたのですが、当時のヨーロッパではザクロがあまり知られておらず、青いタマネギと間違えられたことから「ブルーオニオン」という名前がついたと言われています。(初期はちゃんとザクロを忠実に真似て描いていたそうですが、いつのまにか玉葱に姿を変えたそうです)マイセンのブルーオニオンが本家ですが、あまりの人気のため多くの窯で「ブルーオニオン」が作られました。
ドイツ語の「Zwiebelmuster(ツヴィーベルムスター)」と呼ばれることもあります。
ブルーオニオンはその名前の由来となったタマネギ(ザクロ)の他にも、桃、竹、蓮など、東洋のおめでたい図柄が描かれています。それぞれ、ザクロは「子孫繁栄」、桃は「延命長寿」、竹は「節操」、蓮は「聖性」を象徴しています。
マイセンをはじめとする洋食器ファンにはお馴染みの柄のようだ。
この文様は幾何学的に見ても面白く組み合せされていて、様々な意味や象徴が表現されているようです。興味のある方は是非、調べてみてください。
しかし絵柄は、当時本家マイセンから伝わったというデザインが年月を経て、ザクロは玉ねぎに、桃も縦筋が入り玉ねぎ風に。他の柄もなんかデフォルメされて変なことになっています(笑)。
そんなデザインも含めて、なんとも愛着が湧く一枚。
メーカーの歴史と絵柄が持つ意味に思いを馳せると、1枚800円で買ったことを謝りたくなるほど深い … 。
たま〜にこんな出会いがあるから、リサイクルショップは侮れません。