2023/05/07

vol.4_ コップのこと

連載 もののこと ことのこと

TEXT / SUU
PHOTO / MADOKA

いつものグラス『DURALEX(デュラレックス)』

「オシャレなパリのアパルトマン暮らしに欠かせないグラスはこれ!」
みたいな記事を散髪屋に置いてあった an an だったか olive で読んで「オシャレな暮らし=デュラレックス」と刷り込まれた田舎の実家暮らしの17歳。

『DURALEX (デュラレックス)』とは、世界で初めて強化ガラス製のタンブラーを製造したフランスの食器ブランド。カフェや家庭で、世界中で熱い支持を受け続けている。フランス生まれと聞くとさらにオシャレ気分が高まる。

PICARDIE (ピカルディー)

新潟から上京したての18歳の男が、雑誌で見たようなオシャレな一人暮らしを目指して先ず買ったのが『DURALEX (デュラレックス)』を代表するシリーズ「PICARDIE (ピカルディー)」のグラス。
それは私にとって初めてのパリであり、オシャレなトーキョー暮らしへの第一歩。
八王子のワンルームはどうやっても “パリのアパルトマン” にならないと気付くのはもう少し先だ。

カジュアルな食卓にぴったり

それから36年、私の家のキッチンにはずっと『DURALEX』のグラスがある。
(正確には、結婚を期にお互いの持ち物を整理した時に妻が持っていたひとまわり大きいそれと置き変わっているのだが。)

このグラスは秀逸で、水からウイスキーまで冷たいのを飲むにはなんでもいける。もちろん温かい飲み物でもいける。
私は長いこと、このグラスで飲んできた。そしてその間このグラスが割れるところを見たことがない。36年もの間でだ。ちょっと手を滑らせた程度ではビクともしない。

Saphir(サファイア)

10年以上前に吉祥寺の雑貨屋で、安く売られていたブルーのガラスでできた皿や器が目に留まった。
私は深いブルーが好きだ。中でもフランスの画家 Yves Klein (イヴ・クライン)が創る Klein Blue / クラインブルー と言われる、少し赤みがかった深く引き込まれる様なブルーが好きだ。
このガラスの皿や器はそれに似たブルーをしていて衝動的に買ってしまった。帰ってよく見ると「ちょっと似ている」くらいだったが。

そしてこの皿や器の裏を見ると『DURALEX』と刻印されている。「サファイア」と言われるブルーのシリーズらしい。
ガラスの原料に色を調合し深みのある美しい瑠璃色が表現されいて、 色褪せや変色をすることがなく、いつまでも美しさを保つ。このシリーズが MoMA Design Store で売られているのを見た時、少し得意げに思ったことを覚えている。

サラダやパスタなど、深いブルーが食卓に映える

食器洗浄器OK・電子レンジOK・熱湯OK・フリーザーOKと、丈夫で気兼ねなく使える食器。割れることもあるらしいが、我が家ではまだ一度も割れたことがない。いつもそこにある。
私はこの『DURALEX』達とこの先何十年共に暮らすのだろう。

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TEXT:SUU
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