MaidenVoyage
2025/05/12

浜松から発信するセレクトショップ
「Maiden Voyage / メイデンボヤージュ」

TEXT / SUU
PHOTO / MADOKA

静岡県浜松市にあるセレクトショップ『Maiden Voyage』。
「処女航海」という意味の店名の通り、お客様や地域にとって、常に新たな風を吹き込めるようなお店を目指し2020年にオープン。

浜松駅の南口、電柱がなく、ひらけた地域を真っ直ぐ海の方向へ10分ほど歩いたところに『Maiden Voyage』はあります。
国内外から厳選して仕入れた日本の気候に合った着心地の良い普段着、作り手の思いが伝わってくるプロダクトを独自のセレクトで取り揃え、オーナー加茂さんが生まれ育った浜松から商品の魅力を発信しているお店です。

今回初めてお店にお邪魔し、オーナーの加茂さんにお話を伺いました。

加茂 貴将 / Takamasa Kamo
セレクトショップ『MaidenVoyage』オーナー。
静岡県浜松市出身。大阪の大学に在学中、アパレルショップでアルバイトを経験。卒業後に化粧品メーカーへ就職するも、1年ほどで退職。大阪のメンズセレクトショップ『ZABOU』に勤務し、本格的にアパレルの世界へ。 『ZABOU』の東京出店に伴い上京。その後独立し、2020年に地元の浜松で『Maiden Voyage』をオープン。2023年に古着屋『Sail on,Sailor(現在休業中)』、2024年『Maiden Voyage TOKYO』を開店させるなど、精力的に活動の幅を広げている。

ゆっくり過ごせるお店づくり

加茂さんは大阪の名店『ZABOU』の出身。「30歳までに地元 浜松で自分のお店を出したい」と伝えた上で働き始めました。
私が加茂さんに初めてお会いしたのもその時です。「関西弁を話さないスタッフがいるんだ!」が第一印象です(笑)。とても丁寧な話し方をする人だと感じたのを覚えています。

大阪、そして東京の『ZABOU』で経験を積みながらお客様とお話しをする中で「静岡や浜松から出張で来て服を買ってゆく方や、服を買うために浜松から新幹線でやってくるお客様が多くいらっしゃったんです」と加茂さん。皆さん「地元には洋服を買うお店が少ないので、時間をかけてでも気に入った服を探しに来ている」のだとか。
「私が大阪での学生時代に通った中崎町の古着屋さんのように、服のことを教えてもらったり、話しながら買い物ができるお店が、浜松には少なかったんです。」

地元の浜松でお店を開くイメージが、徐々に確信のようなもに変化します。
「ゆっくりと気に入った服の話をしながら、買い物を楽しんでもらいたい」

セレクトショップの醍醐味を味わえるお店

『Maiden Voyage』がセレクトする商品は、“作り手が見える商品” “作り手の思いが強い商品” で、多くの大手セレクトショップがまだ扱っていないブランドも多くあります。
「あまり知られていない、作り手の強い思いで作られたブランドと一緒にお店も育っていきたい。」と言う加茂さんの思いがお店いっぱいに詰まっています。
そしてコーヒー好きな加茂さんの趣味からカフェも併設し、コーヒーを飲みながらお客様とのお話しもできるお店です。(コーヒーの写真を撮るのを失念してしまいました…!)

表の看板には、コーヒーの文字も

お店の扉を開けると、「明るい!広い!服が沢山ある!」です。
天井も高く、ゆったりとした店内には、一見すると統一感がない様な、色々なテイストの服が並んでいます。

少しですが『Soliloquy』の商品もあります。
春はシャツ、冬はニットも。

商品のセレクトは加茂さんの世界観で、ベーシックから個性的なデザインまで幅広く揃っています。
「セレクトショップはお店が提案するアイテムからお客さんに選んでもらうのが本来のあり方。」と考える加茂さん。目的のブランドを買いに来店して、隣にあった知らなかったブランドを手に取る … 。まるで古着屋さんで宝探しをしている様な雰囲気を体感できます。
私もこの日は知らないブランドの商品を教えてもらい、「やっぱりセレクトショップは楽しいなぁ。」と思いました。笑

セレクトショップも商売ですから、いかに利益を残すかが命。しかし最近ではそればかりに囚われてファッション本来のワクワクする感覚を持ってセレクトされているか疑問を感じることも。
その結果セレクトショップの個性はなくなり、どのショップも同じ品揃え。少しでも差別化をする為にショップ別注の嵐…。別注を受けないと扱わないといったお店まで現れる始末…(半分愚痴ですね)。
何を正解とするかはそれぞれですが、そういった意味では、私にとって『Maiden Voyage』はワクワクするお店に感じます。

『Maiden Voyage』のこれから

2023年、お店から車で15分ほどのところに古着屋『Sail on,Sailor』もオープンしています。「今はスタッフが卒業して休んでいますが6月から再開します。」とのこと。
もともと古着好きな加茂さん。古着は加茂さんの洋服人生の原点。再開が楽しみです。

そして2024年には、東京の白金に『Maiden Voyage Tokyo』をオープン。
加茂さんは言います。「東京は世界中から人がやってきます。SNSで『MaidenVoyage』を知ってもらっても、浜松には行く機会がないな、で終わってしまいます。でも東京に店舗があることによって、今度見てみよう、今度行ってみようと気にかけてくれる人が多い。東京店は、その情報発信の場としての役割。今後も浜松を拠点に活動を続けるために出店しました。」行動力がすごいです。

この日は偶然浜松店に来ていた東京店スタッフ、ボーちゃんこと上ノ坊さんと。

今後の加茂さんの夢を伺うと「最後は、深煎りのコーヒー屋をやって暮らしたい」そうです(笑)。
そのためにも今の『Maiden Voyage』『Sail on,Sailor』『Maiden Voyage Tokyo』の実店舗としての価値を高めてゆき、湖が好きなので浜名湖の湖畔に人が集まる場所をつくりたいそうです。

さらに、いつか浜松駅の近くに浜松の土産物屋を開くことも考えているのだとか。
「大きな百貨店で扱わない、有名ではないけれど浜松で古くからやっている手作りの和菓子屋さんや、ローカルで飲まれている美味しいお茶など、地元の人が知っている浜松の、素朴だけど素晴らしいものを扱う土産店を開きたい。」と。
私も出張で訪れる町の、家族でやっているような小さな和菓子屋さんを見つけるとつい入ってしまいます。素朴で大雑把なんだけど美味いですよね。楽しいお店になる事でしょう。

加茂氏は、”作り手が見える商品” ”作り手の思いが強い商品” で、本物を伝えます。「誰も知らないような、作り手の強い思いで作られたブランド(商品)と一緒にお店も育ってゆきたい。」と話します。服に留まらず、どんどん夢に向かっています。
最終目標の「深煎りのコーヒー屋をやりながらのんびり暮らす日々」はずいぶんと先のようです(笑)。
浜松の『Maiden Voyage』。静かに、熱く盛り上がっています。

店舗情報

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