INDICE
2025/01/10

縫い手の育成を見据えた服作り
INDICE(アンジーズ)

TEXT / SUU , MADOKA
PHOTO / MADOKA

INDICE(アンジーズ)は東京の武蔵小山にある縫製工場であり、サンプル製作がメインの工房。
洋服のサンプルとは、多くのアパレルブランドが作る試作品のこと。そのサンプルを元に微調整を行い、本生産に向けて完成度を高めて製品に仕上げます。サンプルの出来栄えが商品のクオリティに左右されると言っても過言ではありません。

ここアンジーズは、10人ほどの職人でコレクションブランドから有名デニムブランドのサンプル、さらに個人オーダーまで、幅広いクライアントからの依頼を形にします。
こだわった服づくり。私も相談に乗ってもらっています。ありがとうございます。

[ Soliloquy – ATELIER MADE by INDICE ]Organic Cotton Serge Work Pants
(¥33,000 税込)

何でも縫える、そして完成度が高いサンプルや製品を作ることが出来る貴重な工房の一つが、このアンジーズ。様々なオーダーに応えらるよう、多くのミシンを揃えています。
中でもサンプル中心の工房としては珍しく、デニム製品を縫い上げる特殊ミシンがほぼ揃っています。(通常デニム製品は、専用の設備が揃った量産工場でサンプルを作っています。)

様々なミシン、機械がずらり。圧巻です。

INDICE / アンジーズ
始まりと想い

アンジーズの始まりは2017年。代表の藤本氏が岡山県井原にあるデニム生地メーカー「(株)岡本テキスタイル」と共に、東京の桜新町にサンプル工場を開設。その後2021年に現在の武蔵小山へ移転しました。
デニム生地メーカーが母体なだけあり、先に記した通り、デニム製品に必要な特殊ミシンなども揃えているというわけです。

なぜ、東京にこれだけの設備を揃えた工房を構えたのか。代表の藤本氏にお話を伺いました。

藤本 純哉 / Junya Fujimoto
三重県出身。大手アパレル企業のトラディショナルなブランドでパタンナーとして従事。その後ストリートブランドやOEMメーカーなどで経験を積み独立。
「日本の縫製工場を絶やさず、日本のものづくりを継承して行きたい。」との熱い想いから、(株)岡本テキスタイルと共にアパレルサンプルの縫製工場「 INDICE / アンジーズ 」を設立。
洋服を一人で「まる縫い」出来る縫製職人を育てることを念頭に、日々若いスタッフと向き合いながら、日本のものづくりを絶やさないよう種を撒き続けている。

長年アパレルメーカーで経験を積んだ藤本氏。独立の際に、昔お世話になっていた工場を尋ねます。すると工場で働いている職人さんたちの年齢の高さに改めて驚いたのだそう。
日本の洋服の生産は低価格を求めて日本からアジア各国へ移っており、日本の工場には人が集まらず、職人さんの年齢は上がるばかりだったのです。

藤本氏はそんな現状を目の当たりにし危機感を覚えます。「日本の丁寧な服作りを次世代に伝え、人材を育ててゆかないと。このままでは“Made in Japan”の洋服は途絶えてしまう。」
さらには「多くの工場は分業制で、一部の縫製しか出来ない人材になってしまう。」と藤本氏。
工場に働きに行っても、例えばポケットならポケットだけを縫い続ける。それでは将来食べていくことが難しい現状。
どうしたら職人を目指して人が集まってくれるか考えます。

そこで「一から洋服を丸ごと縫い上げることができる職人を育てる場を作ろう。そうすれば将来、工場自体を継承してゆくことが出来る。そうやって少しづつ日本の服作りを繋げて行ければ。」と、藤本さんの熱い想いから INDICE は始まったのです。

東京に INDICE を構えた理由は「若い人材に集まってもらいたいからです」の一言。
これだけの設備を揃えたスペース、下世話な見方をすると家賃が高い東京は避けたくなるように考えますが … 若い人の多い場所、そして通勤のしやすい場所。駅からの近さもポイント。
確かに、職場の場所って大事です。ちなみに誘惑がたっぷりな武蔵小山の商店街も魅力的です(笑)。

サンプル工場としては珍しい、巻き縫いミシン。
若手のホープ、山本さんに実演していただきました。かっこいい!
1番高価だというボタンホールを縫うためだけのミシン。

技術の継承

アンジーズは日本のものづくりを絶やさないよう、種を撒き続けています。

定期的に熟練の技術を持つ縫製職人を迎え、若い職人へ技術指導を行なっています。
若い職人は日々サンプルを製作するなかで、熟練した技術の指導を受けながら、製品を「まる縫い」する技術を身に付けてゆきます。
自分が作る商品に強い想いを持った職人が縫う洋服は、1枚1枚とても入念な仕上がり。
※「まる縫い」とは、全ての工程を一人の職人が仕上げること。

熟練の技術を持つ職人、戸田さん。若手の指導も担います。

また、プロのパタンナーさんから一般の方まで幅広い方々に向け、縫製の技術継承を目的としたワークショップを開催。
SNSで参加者を募い、ジーパンやジージャンを1日でまる縫いする講習会や、取引先のパタンナーさんを迎えての技術交流会を開催するなど、洋服へ携わる人たちへの縫製技術の継承に余念がありません。

例えばデニムの商品作りを継承するには縫製技術以外に、パタンナーさんの技術、知識の向上も必要になります。
こだわった作りのデニムやコットンパンツなどは、綺麗なパターンを引いてもそのままでは思った形になりません。洗いによる生地の縮みや、専用のミシンによる縫い縮み、縫いシロの幅などの違いを考慮する必要があり、その特殊な縫製を踏まえての加工指示やパターンメイキングが必要なのです。
そういった指示を出すパタンナーさんの知識を向上させるには、自分で引いたパターンで実際にデニムを縫ってみることで理解するというわけです。

こうやって、縫製技術だけでなくパタンナーさんの知識向上まで目を向けるアンジーズ。熱い想いに頭が下がります。

日本の服作りを盛り上げる

アンジーズの想いは「日本の縫製工場を絶やさず、日本のものづくりを継承して行きたい」につきます。

今日本には、閉めようとしている縫製工場がたくさんあります。そこには長年使ってきた大切なミシンもあります。その工場を若い職人に継承して貰いたい。そして縫い手と共に日本の服作りを続けて貰いたい。
工場を継承し運営するには、裁断から縫製・仕上げまでの全ての工程を理解する必要がある。
そう、「まる縫い」が出来る職人となれば、工場を継承することも自身で独立することも可能となります。

今日本のものづくりにこだわる時、避けて通れない後継者の人材不足と、続けていくことの大変さ。
ものづくりをしている方々にお話を伺うと、誰もが口にするこの問題…。
サンプルアトリエとしての商売を確立させながら、この問題に真っ向から向き合い、解決するため人材育成から行っているアンジーズ。
その結果、アンジーズの作る服はとても丁寧に作られています。

「洋服がどのように作られているかを少しでも多くの人に知ってほしい。」という作り手さんの想い。
今私たちが楽しんで着用している洋服も、こういったアトリエや工場、職人さんなどの懸命な努力の上に成り立っています。
最近では、どのように作られているかを知ることでファッションへの愛着をもつ方も増えているように感じます。
私たちも服作りの一旦を担う立場として、より愛着をもって楽しんでいただけるよう、さらに努力したいと思えるようなお話を聞かせていただきました。

お話を伺った藤本氏。

そして藤本氏は言います。「今の若い子には日々勉強させられます。」と。
「今の若い子は言った事しかやりません。自分が若い頃は“1”を言われればそれにまつわる“10”の事を考えて、やろうとしましたが…。」
その反面「ただ、私が言ったことはちゃんとやるんです。丁寧に。」とのこと。
なので「言ったことしかやらないのは、言ったこと以外を伝えていない私が間違っていたんだ。」と気付いたのだそう。
「ちゃんと伝えればちゃんとするのです。逆に言えば余計な事をして失敗するのが怖いのかもしれません。だから、伝える事をちゃんと伝えようと。」そうやって若いスタッフとのコミュニケーションを日々勉強しているそうです。
昔は昔、今は今。柔軟な考えで物事を進めてゆく藤本さん。この考え方を持つべきおじさん達…、身近にたくさん居そうです…。自戒の念を込めて気をつけたいです。

明るく軽快な話し方が魅力の藤本氏。イベントや講習会も盛り上がること必須です。
SNSなど、是非チェックしてみてください。

INDICE / アンジーズ

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TEXT:SUU
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